共有

第35話

彼の冷たい視線を感じ、霧島弥生は少し戸惑った。

昼、彼は江口奈々と一緒に会社に来たのではなかったのか?では、なぜ江口奈々は今オフィスにいないのだろう?

そんなことを考えていると、江口堅が何か質問してきた。霧島弥生は我に返り、急いで対応した。

仕事の報告が終わると、江口堅はすぐに出て行く準備をした。

宮崎瑛介は冷淡に頷いた。

江口堅が去ると、宮崎瑛介の視線は完全に霧島弥生に向けられた。先ほどは江口堅の後ろに立っていたため、少しは視線を避けられていたが、今はもう逃げ場がなかった。

ちょうどその時、オフィスのドア近くにいた江口堅が突然振り返り、霧島弥生に向かって言った。「明日の昼も迎えに来るよ」

その言葉を聞いて、霧島弥生は一瞬固まった。

宮崎瑛介も何かを察したのか、眉をひそめた。

「宮崎さん、霧島さんと少し話しても構いませんか?」

霧島弥生は眉を寄せた。

彼は何を考えているのだろう?

しかし、彼女が反応する前に、宮崎瑛介は冷たい声で言った。「できればやめてくれ。今は勤務時間だから」

「そうですか」江口堅は少し驚いたようだったが、反論はせずに続けた。「それなら、退勤後にまた迎えに来ます」

そう言って、江口堅はそのままオフィスを出て行った。

オフィス内は一瞬で静まり返り、時計の針が落ちる音すら聞こえそうなほどだった。

江口堅が去ると、宮崎瑛介の視線は一層鋭くなり、霧島弥生の顔にまっすぐ向けられた。その視線には一抹の不満が感じられた。

「彼と一緒に出たのか?」

霧島弥生は頷いた。彼女と江口堅の間には何もやましいことはないので、否定する理由はなかった。

宮崎瑛介は眉をひそめ、「彼と何をしていたんだ?」

「昼食をとりながら、昨日の仕事について話したわ」

宮崎瑛介は「昼食」と聞いたときさらに眉をひそめたが、その後に「仕事の話」と聞いて少し眉を緩めた。

そうだ、二人は同じ会社で働いているのだから、仕事の話をするのは当然だ。

しかし、それでも宮崎瑛介の心にはまだ不快感が残っているのか、彼は唇を引き締めた。「昼食の時に仕事の話までしなきゃならないなんて、まるで俺が君をいじめてるみたいじゃないか」

霧島弥生は反射的に答えた。「私をいじめてないって思ってるの?」

その言葉が出た瞬間、二人とも驚き、霧島弥生は自分の舌を噛み切りたくなる衝動に駆ら
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status